秘密の地図を描こう

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 その頃、キラはラウによってベッドの中に放り込まれていた。
「あの……」
「いいから、そこでおとなしくしていなさい」
 今は、とラウは言葉を口にする。
「もう少しすればギルが来る。彼の診断を受けるまでは、ね」
 微熱が出ているだろう? と言われては反論のしようもない。
「すみません」
 確かに、今のままでは皆の足手まといにしかならないとはわかっている。
 それでも、だ。
 先ほど感じたあの感覚がなんだったのか。それを確認したい。その気持ちを抑えきれない。
「……先ほどのことは、レイが来るまで待ちなさい」
 それが伝わったかのようにラウがこう言った。
「ラウさん?」
「あの感覚は、私にもいやと言うほど身に覚えがあるからね」
 ふっと眼を細めると彼は言葉を綴る。
「ならば、あの子も感じ取っていたとしてもおかしくはあるまい」
 それを確認してからでも遅くはないだろう、と彼は続けた。
「もし、我々と同じ存在がまだ他にいる――あるいは、あの男の関係か――としても、だ」
 そうだろう? と彼は問いかけてくる。
「……もし、そうだとするなら……」
 やはり、とキラは続けようとした。
「却下、だよ」
 即座にラウは言葉を返してくる。
「ラウさん?」
「君の体が耐え切れまい。それに……あちら側にいるのは君やヴィアが関係していない者達だよ?」
 レイであれば妥協しよう。しかし、見知らぬ者達のためにキラの体がこれ以上損なわれるのはごめんだ。彼はそう言いきる。
「私に『生きろ』と言ったのだ。その言葉に責任をとってもらわないといけないからね」
「……責任、ですか?」
 まさか、こう言われるとは思わなかった。心の中でそう呟きながら、キラは聞き返す。
「そうだよ。だから、君は私よりも先に死ぬことは許されない」
 もっとも、と彼は微笑む。
「私たちが君を死なせないがね」
 どのような手段を使ってでも、と続ける彼が少しだけ怖い。
「覚悟しておきなさい」
 さらに笑みを深めると、彼はそう宣言をしてくれた。
「はい」
 彼に生きていてほしかったのは、自分のしたいことを探してほしいと思ったからだ。
 しかし、これは全く予想していなかったな……とキラは思う。
 それでも、今の彼は楽しそうだ。だから、いいのだろうか。でも、自分が考えていたのはこんなことではないのに、と思う。
「と言うことで、今は眠りなさい」
 それが一番、キラの体にはいい。こう言うと同時に、彼はそっとキラの髪に手を置く。そのまま、位置をずらすとキラの目を覆った。
「……はい」
 予想以上に疲労がたまっていたのだろうか。それだけで眠気が襲ってくる。
「大丈夫。私はここにいるよ」
 ラウの声が心地よく思えた。
「お休み」
 その声に促されるようにキラの意識は眠りの中に落ちていく。
「おや? 眠ってしまったのかな?」
 ギルバートの声が聞こえた。そう思ったのが最後の記憶だった。

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最遊釈厄伝